| 献立 |

朝起きて、仕度して、仕事に向かうとき、
毎日のように母が私にかける言葉は、
「いってらっしゃい」ではなく、
「今晩何食べたい?」です。
朝ごはんもまともに食べないのに
夜に何を食べたいかと聞かれても
なかなか思いつきませぬ。
だから私は毎朝決まって
「朝に夜ご飯を聞かれても困る!わからない!」
と答えます。
この不毛(?)なやり取りが、毎朝繰り返されます。
「夜何食べたい?」 「わからない!」がまるで
「行ってきます」 「行ってらっしゃい」
の代わりの文句のようになって、
毎朝私は送り出されてます。
ある時、なぜ毎朝同じ質問をしてくるのか、
母に聞いてみました。母曰く、
毎日の悩みは、晩ごはんのメニューを考えること。
朝起きて、まず悩むのが晩ごはんのメニュー。
何作ろう? 何作ればいい? 何買おう? 何食べたい?
あぁ、わからない、面倒くさい。
しかし、逆に言えば、晩ごはんのメニューさえ決まっていれば、
1日の大きな悩みから開放されるということ。
それで毎朝同じ質問をしてくるのというわけです。
うーん、それは小さいようで、
なかなか頭の痛い問題かもしれない。
だって、終わりがない。
そして同じ事で頭を悩ませている方も多いはず。
「今夜のおかずモンダイ」は、乗り越えても乗り越えても、
毎朝やってきて頭を悩ませる。
ひとつ山越しゃほんだらったほいほい、
なんて呑気になってもメニューは決まらない。
「なんで毎晩食べなきゃいけないのかね。
今晩くらい食べなくてもいいんじゃないかね?」
なんていう日もあるくらいですから、
母にとっては大変な問題、なのですね。
なので最近は、朝の質問に何か答えるようにしています。
とにかく「わからない」はナシ。
今日も鍋でいいよ、とか、
昨日の余った白菜使ってしまおう!とか、
魚がいいとか、肉が食べたいとか。
それだけで、母も幾分か助かっている様子で、
最近ではこちらも頭をひねるようになっています。
何も思いつかないときは鍋!と答えて、
「おだしをかわったものにして!」と頼んでいます。
そんな小さなことで、
朝の会話が少し増えた母と私です。
30年近く親子をやっていて
今さら会話が増えるというのは、
なかなかくすぐったいものでございます。
BLUE WINE



