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「水のインタビュー」第9回 斎藤仁志さん(2)

陸上部は、世界レベルで活躍するスーパースターの桁違いの選手ばかり。入学当時は、壁にぶち当たりましたね。しかも、一人暮らしで料理もままならず、生活に馴染めないこともあり、すべての面でつらかった時期もあります。
okuhida gensui

沢樹:大学に入学して陸上部に所属され、成績も伸びてきましたね。筑波大学は、陸上をするにはとてもいい環境だと思いますが、いかがでしょうか?

齋藤:陸上部は、世界レベルで活躍するスーパースターの桁違いの選手ばかり。入学当時は、壁にぶち当たりましたね。しかも、一人暮らしで料理もままならず、生活に馴染めないこともあり、すべての面でつらかった時期もあります。
でも、筑波大学の陸上部は、強い選手たちがいるだけではなく、コーチをはじめ、施設や研究の面においてすべてが優れている。恵まれた贅沢な環境に身を置くことで、自然と記録が伸びてきたんです。

沢樹:トップアスリート集団の中で頭角を現し、世界の舞台に立つことになるわけですが、壁をどのように乗り越えたのでしょうか?

齋藤:同世代の多くの仲間は、10代から注目され、陸上に専念できる環境で走り続けています。僕はそれがなかった分、のびのびとマイペースで練習をしてきたこともあり、壁があっても自然と記録が伸びてきたことで、いつの間にか壁を乗り越えられたのかな。特別な練習をしなかったのがよかったんだと思いますよ。

沢樹:あえて特別なことをせず、自分のペースをつかむ。それは、大切なことですよね。

齋藤:そうなんです。練習熱心な人は、決められた練習の前に自主練習をしていますが、オーバーワークでケガをすることも多い。だから、僕はやれと言われたことしかやりません。コーチからのアドバイスを素直に受け止めて、練習した方が僕には合っています。練習が嫌いだと仲間たちは思っていますが(笑)。
実は、北京オリンピックの選手に選ばれてからはりきって練習をしていたら、ケガが多くなってしまったんです。なので、のびのびと練習することに戻したんですよ。
朝から晩まで走り続けて強く慣れるなら一日中走っていたい。でも、陸上は違います。短距離走は、集中して練習をして1、2本走り、きっかけをつかめば強くなれる、そういう世界だと思いますよ。

沢樹:強さのきっかけは、どのようにつかむんですか?

齋藤:1本走ってみて、自分の走った主観と、走り方の理論やコーチなどの客観を合わせてそれを近づけていく。踏み出し、フォーム、走り方の微調整を何度も繰り返してベストな状態を見つけるという感じです。これをつかめれば勝ち方がわかるんです。
試合では100%の力で走っているので意識介入はありませんが、練習は97%くらいの力で走っているので、自分を客観的にも見ることもできる。ここで調整を行っているわけです。
1日に走る本数を限定して、コーチと打ち合わせしながら走るのは、精度を上げるため。だからこそ、素直さが必要なんですよ。僕とコーチの意見が一致することは難しいですが、この繰り返しで、ここまできたわけですから。

沢樹:微調整をしながら主観と客観を一致させるとは、陸上は哲学的で奥深い競技ですね。

齋藤:ただ単に、速く走ればいいというわけではありません。特に200m走は、100m走とは違いメリハリが必要です。200mは、約20秒の中で駆け引きがあり、スタートで失敗したとしてもゴール前で挽回できるチャンスがあります。
100分の1秒を常に意識しているから、15秒で100mを走れと言われたら、だいたいプラスマイナス0.1秒くらいで走れるようになりました。大学に入りたての頃はこういう微調整ができなかったけれど、練習を積み重ねて時間の感覚もわかるようになった。ずいぶん、ベテランになってきましたね(笑)。
中学生や高校生時代には気づきもしませんでしたが、陸上は奥深いだけではなく、意外と繊細な競技だと感じています。

沢樹:たしかに繊細ですね。陸上に対する見方が、ますます変わります。
ところで、世界陸上、北京オリンピック、次は2012年のロンドンオリンピックを視野に入れていると思いますが、オリンピックへの思いを教えていただけますか?

齋藤:ロンドンオリンピックは、競技人生の集大成だと考えています。そこで、しっかりと結果を残したい、やはりリレーではなく個人として勝負したいのが本音です。

沢樹:ぜひ、ロンドンの舞台で200mの決勝を走っていただきたいです。ちなみに、日本では200mで1位ですが、世界でのライバルとよべる選手ははどのくらいいるのでしょうか?

齋藤:ライバルという選手は特にいませんが、現在僕は、世界ランキングで30番台、アジアランキングでは2位にいます。ここから、1つでもランクを上げられるようにしたいという気持ちはありますね。世界のトップ10になることは、身体面を考えると本当に難しいことなんです。
皆さんもご存知のように、現在の世界ランキング1位は19秒1の記録を持つボルト選手。僕とは1秒3、約15mの差があるわけです。1秒を縮めるのではなく、100分の1秒ずつ縮めて、いずれ19秒台で走れるようになれることを信じて日々練習するしかありません。

沢樹:15mの差を縮めるための1秒への挑戦が続くんですね。

齋藤:19秒に近い数字で走る選手が徐々に出てきていることもあり、最近、自分ではない他の選手が、19秒でゴールをしてしまったという夢を見て、ハッとして目が覚めることがあります。そういう夢を見るということは、日本で一番先に19秒台を走りたいからです。
自己ベストが20秒42なので、少しずつ記録を縮めて、自己ベストをあと43回更新すれば19秒にいくので、まずはこれを目指しています。少しずつゲーム感覚で縮めていければ、いつかたどり着ける領域のはずです。

沢樹:ゲーム感覚というのが、齋藤さんらしいのかしら(笑)。クリアしたときの達成感は大きいことでしょうね。たった1秒にかける思い、計り知れないものがあります。

次回、Part3へ続きます。

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奥飛騨原水

ヒロコ@奥飛騨原水  2010年3月17日 11:34

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ヒロコ@奥飛騨原水

リゾート地として有名な岐阜県数河高原に隣接したタンカナ高原は、ブナの原生林や落葉樹が手付かずの状態で残っている全国的に希有な場所です。古来よりブナの木は「緑の水ガメ」と呼ばれ、その優れた保水力が土中の水を豊かにします。この自然の中で生まれた水「奥飛騨原水」を通して、皆さまから「水」や「水のある暮らし」について、お話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
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