| エッセイ 丸ごと 仔豚 |
仔豚の丸焼きを食べた。バリに行った時のことである。
口から尻へ。ぐっさり容赦なく貫通する竹の棒。それを時々、ぐる〜りぐる〜り廻しながら全体を焼き上げる。仔豚の顔は、おだやか......では決してない。耳はピンとたち、口があんぐり開いているためか、不意をつかれた驚きの表情で止まっているようだ。
「きゃあッ、グロテスクゥ〜」隣にいた、若いお嬢さんが叫ぶ。にっこり微笑み返しながら、私は早く食べたいなぁと心でつぶやき、生ツバをのみこんでいた。
こんがりパリッとした皮。薄く削がれたジューシーな肉。噛む隙間から放たれる香り。皮と肉の合間から舌に滴り落ちる油が、脳天までふるえさせ「後戻りできない感覚」へ誘う。ああ、旨い。
仔豚の丸焼き。バリ式の結婚セレモニーでふるまわれる特別料理だった。祝の宴にふさわしく、数々の料理が、美しい幾何学模様のように華麗に盛られていた。焼きあがった仔豚ちゃんは、食べやすい矩形にカットされ、模様の一部になっていた。
きゃあと叫んだ女性も「なにコレ?!おいしい!」とおかわり。まったく人とは都合よくできているものだ。素晴らしいことである。
「丸ごと」は、たいてい旨い。ほぼ旨い。ぜったい旨い。
烏賊のワタ入り丸焼き、丸ごと鶏のスープ、玉ねぎの丸ごとグリル、にんにくの丸揚げ、丸ごと小あじの南蛮漬け、丸ごと魚のアクアパッツア・・・
皮とか内臓とか、苦味とか酸味とか、面倒なカタチとか偏ったクセとか。丸ごと全部をひっくるめてこそ生まれる旨さが、そこにある。甘みや旨みが最大限になって、何かを掻いくぐるように、舌に、腹の底に、訴えかけてくる。
人間同士だって、丸ごと付き合う素晴らしさには、替えがたい喜びがある。何もかも丸ごと受け入れないと、親友とか恋人とか、ましてや家族にはなれない。そう、あなたのことは、苦味も酸味も面倒なところも偏ったクセも、丸ごと好きなのよ。
後戻りできない感覚。丸ごとの旨さは、覚悟の味わいである。そうか、丸ごと料理の、あの華やかで迫力のある見た目は、「覚悟しなさい。そうしたら最高の官能をあげるよ。」という、解りやすいサインなんだ。
コメントありがとうございます。
調子にどんどん乗りますので、
どんどん持ち上げてください。
食べ物の話って、「人」がでますよね。
コメントありがとうございます。
調子にどんどん乗りますので、
どんどん持ち上げてください。
食べ物の話って、「人」がでますよね。





大人の女でないと、書けないぞ、この文章。
セクシーで意味深い言葉の数々。ちょっと持ち上げ過ぎか?
いや、会ってみたい、一緒に食事したら、ここには書けないヒミツの会話が、、、(笑)