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コーナータイトル

低温調理を始めました。

家でたべるの フィレミニョン  ヨーグルティア  低温調理 

今まで経験したことのないような全く新しい食感を与えてくれるそうです。
「真空調理」とか「低温調理」という料理法を聞いたことがあったけれど、かなり高級で、しかも先進的なレストランでしか味わうことができないような、そんな料理を私は口にしたことがありませんでした。
それでも初心者とは言え、料理をするものとして、興味はありました。
「経験したことのないような、全く新しい食感」ですからね。
今年の6月頃に観た「2つ星の料理人」というグルメ映画にも「真空調理」は出てきていたし。
う〜ん、食べてみたい。グランメゾンに行けなくとも、自分で作れないか?・・・えっ?

初心者にありがちですが、妄想だけが限りなく広がっています。自分の手で最高のフィレミニョンを「真空調理」とか「低温調理」して食べてみたい。
調べてみると、家庭料理用に「真空調理」も「低温調理」も、すでに調理器具がいくつか提供されているのでした。どれが良いのだろう。まだ食べたこともない全く新しい牛肉の美味しさを、すでに我がものにしたような気持ちです。

ミオシン、アクチン、コラーゲン。肉のタンパク質は大きく分けて3種類あるそうですが、これらのタンパク質が変性する温度というのに着目したのが「真空調理」であり「低温調理」なのです。
途中を端折って結論を言ってしまうと、ミオシンが変性して、コラーゲンも少しだけ変性し、アクチンが変性しない温度。つまり、56℃から64℃の温度になるように熱を入れると、最高のコンディションの、私などが経験したことがないような美味しい肉料理になる。ただし、この温度は肉の表面温度ではなく、中心温度ですよ、と。
フライパンでステーキを焼くと、例えばミディアムレアだと、肉の表面はかなりの高温で焦げ茶色の焼き色になっていますが、中心部はまだ生肉のような赤い色です。肉に熱を入れるということは、焼くにしても、煮るにしても、熱が表面から中心部にジワジワと伝わっていくわけですが、「真空調理」や「低温調理」は、肉の表面も決して65℃以上にはしない。それでいて中心部も56℃から64℃になる。どういうことでしょう。

湯煎です。
素材内部まで均一な温度にするためにはかなりの時間が必要ですが、「真空調理」も「低温調理」も、つまりは湯煎です。「真空調理」は、ある一定時間加熱して、その後は魔法瓶の保温効果と同じ構造の鍋で、ゆっくり保温加熱することを言う場合もありますが、ここでは、牛肉などの素材をポリ袋で真空密閉して、それを湯煎する料理法を言っています。「低温調理」と全く同じ調理法です。

ヨーグルティアSという調理器具を手に入れました。もともとは家庭でヨーグルトを作ることを目的に開発されたものですが、低温調理器具としても注目されています。調理温度を25℃から70℃の間で1℃単位で設定できて、調理時間も30分あるいは1時間単位で最長48時間をタイマーで指定できる優れもの。
56℃から64℃の間で3時間から4時間加熱したい今回の用途には、まさにバッチリ。欠点といえば容器がやや小さく、500gぐらいまでならなんとか扱えそうだけれど、それ以上大きな肉の塊は容器に収まらない。
まあ、もともとはヨーグルトを作るためのものですから、仕方ありません。
通販でヨーグルティアSと同時にフィレミニョンも手配しました。

調理にかかる前に、まず牛肉を常温に戻します。塩胡椒をして3時間ほど待ちました。
低温調理を始めます。まずは肉をポリ袋に入れて、できるだけ空気を抜きます。この空気を抜く、脱気と密閉のための専用器具もありますが、今回はストローで空気を抜いたりしてなんとか人力で密封。
あらかじめ沸騰したお湯に、温度計でチェックしながら水を混ぜて、ちょうど62℃のお湯を作りました。
密閉したフィレミニョンを納めたヨーグルティアSの容器に62℃のお湯を注いで満たします。
あとはヨーグルティアSにおまかせ。62℃で3時間の加熱設定です。

冬の陽射しが差し込む午後2時過ぎから作業を始めて、フィレミニョンを常温に戻すのに3時間、さらに低温調理に3時間。すっかり夜になりました。その間、手を出すことは何もありませんが、6時間もかかる調理です。
午後7時ごろから特製のソースエスパニョールを作ったり、付け合わせのニンジンのグラッセとかサトイモのマッシュを作ったりしていると、ピッピッピッと低温調理完了の合図。

お湯の中、ポリ袋に密封されたフィレミニョンを取り出します。このままでも良いのですが、牛肉の場合メイラード反応と呼ばれる表面を高温で熱する工程を加えると、素晴らしい香りが生まれます。
せっかく時間をかけて低温調理したフィレミニョンですから、高温のフライパンで加熱するのはほんの一瞬。
オリーブオイルとバターを十分に熱し、ニンニクとローズマリーを落としたフライパンに表と裏あわせても1分以内の、ほんとうに焼き色をつけるだけの火入れをしました。

さあ、どうだ。ニンジンとサトイモのガルニとともに皿に盛りつけ、ソースエスパニョールをかけました。
ナイフを入れます。柔らかい。中はロゼ色。良い香り。うわっ、うまい。この食感、あえて言葉にすればシットリかな。
う〜ん。私はやっぱり肉が好きだ。歳をとってからは和牛の霜降りが少し食べにくくなりましたが、この柔らかい赤身の、上質なフィレミニョンなら、まだまだいけそうです。

うまいうまいと言っても所詮アマチュア。超一流のシェフによる「真空調理」は、きっとこんなもんじゃないでしょう。しかし、それでも確かに「低温調理」の新食感を得ることはできました。

思えば家庭料理は、何回ものエッポックメイキングな調理器具の出現によって、飛躍的な進化をしてきました。
19世紀後半にガスコンロが登場したことで、それまでの薪や石炭を燃料にしていた時代に比べて、料理は格段に扱いやすいものになりました。
20世紀になると冷蔵庫が現れました。冷たくするという機能はもちろんですが、食品を保存するということ、しかも家庭で保存できるようになったということが、生活に革命を起こしました。
少しスケールは小さいかもしれませんが、フードプロセッサーも家庭料理に変革をもたらしています。それまでの下拵えの大変だったこと、2〜3時間費やして、砕いてすり潰してようやく食卓に提供できるようなメニューを、いとも簡単にやってのけるようになりました。超高級メニューが身近なものになったのです。
最近で言えば電子レンジですね。ご存知、チンする暮らしの始まりです。
これらの変革は、一流のシェフによる革新ではなく、家庭料理に起こった革命です。

新しい調理器具は新しい料理を生み、新しい料理は新しい暮らしをもたらします。
低温調理器具も、家庭料理を大きく様変わりさせる可能性を持っていると、私は睨んでいます。

鶏ムネ肉のコンフィです。ポリ袋に密閉する前に、軽く塩胡椒、そして胡麻油とだし醤油でマリネしています。牛フィレミニョンと同じく62℃で3時間加熱しましたが、その後はソテせず、そのまま薄切りにスライスして盛りつけました。ムネ肉なのにシットリ。低温調理の良さがよく分かる。

あまりに美味しかったので、もう一度鶏ムネ肉。今度はカレー風味です。これも素晴らしい。
食べる時に辛子醤油を少しつけると絶品でした。

 

takahash  2016年12月27日 09:27

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